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高齢者の転倒の危険性とは?原因を把握して寝たきりになるのを防ごう

人間は加齢とともに、筋力の低下や、歩行障害、視力の衰えなどさまざま要因が重なり、バランスを保ちにくくなっていきます。高齢者になるとこれらの要因に加えて、病気や服薬によって転倒するリスクがさらに高まり、思わぬ場所で事故が発生することもあります。高齢者やその家族にとって、転倒は寝たきりにつながる重大な事故になりかねず、その危険性を前もって知って、対策をしておくことが大切です。
今回は高齢者の転倒リスクと予防法についてご紹介します。

高齢者の転倒イメージ1

高齢者にとっての転倒の危険性

転倒は若い人なら軽いけがで済んでも、高齢者にとっては大きな事故につながることがあります。高齢者にとっての転倒の危険性についてお伝えします。

転倒は要介護の要因

「令和4年版 高齢社会白書(全体版)」によると、高齢者が「要介護」となる主な原因は、認知症、脳血管疾患(脳卒中)、高齢による衰弱と続き、「骨折・転倒」は全体の13.0%を占め、4番目の多さになっています。

また、消費者庁・独立行政法人国民生活センターには、医療機関ネットワーク事業5を通じて、令和3年3月末までの6年間に発生した65歳以上の高齢者による住宅での転倒事故の情報が299件寄せられています。住宅発生299件のうち、 前期高齢者(65~74歳)が91件に対し、後期高齢者(75歳以上)が208件。 また、男性が112件に対し、女性が187件。 男性よりも女性が転倒しやすいという結果になっています。
転倒により動けない状態が長く続くと、歩行機能が衰え、「要介護」となる可能性があります。

転倒が原因で寝たきり状態に

若い人なら少しくらいけがをしたり病気にかかったりしても、安静にして寝ていれば大抵は治ります。しかし、高齢者にとって過度の安静は、筋力や身体機能の衰えを招き、症状を悪化させる要因にもなります。

中でも転倒が原因で起こりやすい大腿骨の骨折は、歩けるようになるまでに時間がかかるため、そのまま寝たきりになることも少なくありません。

骨折やけががなかったとしても、転倒により自信を失ったり、自力で動くことに対して恐怖心を持ったりすると、体を動かさなくなり、筋力が次第に衰え始めて、身体機能の低下を招くこともあります。

このように転倒は、高齢者の生活に大きく影響することがあるため、十分な対策を取る必要があります。

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高齢者の転倒が多い場所

高齢者の転倒事故は屋外ばかりでなく、自宅でも多く発生しています。高齢者が転倒しやすい場所を確認しておきましょう。

自宅の転倒は「庭」よりも「室内全般」が多い

「平成22年度 高齢者の住宅と生活環境に関する意識調査結果(全体版)」によると、転倒した自宅の場所では「庭」が最も多く、次に「居間・茶の間・リビング」「玄関・ホール・ポーチ」「階段」「寝室」と続きます。転倒場所を「庭」と室内に分けると、「庭」よりも「室内」での転倒が多く(複数回答)、高齢者にとっては安全と思われる室内にも危険が潜んでいることがわかります。

室内の転倒しやすい場所

次に室内の転倒場所だけを見てみます。
上記のように、室内の転倒場所では「居間・茶の間・リビング」の割合が20.5%と最も多く、次いで「玄関・ホール・ポーチ」が17.4%、「階段」13.8%、「寝室」10.3%、「廊下」8.2%、「浴室」6.2%の順となっています。
身体機能の低下によってすり足で歩きがちな高齢者は、カーペットや敷居などのちょっとした段差でも足を取られて転倒することがあるので、居間などの居室についても注意が必要です。時には、段差のない廊下やフローリングで足を滑らせることもあります。

また、足を踏み外しやすい階段や玄関、浴室などでは、重傷を負うおそれもあります。高齢者がいる家庭では、至るところに手すりを取り付けるなどして転倒予防をしておくことが大切です。

高齢者の転倒の原因

転倒の原因には、身体的なものが原因となる「内的要因」と生活環境から来る「外的要因」に大きく分けられます。それぞれ具体的にご説明します。

外的要因

自宅内には転倒につながる外的要因が多く潜んでいます。例えば、室内のわずかな段差。歩幅が小さい高齢者にとっては、普通なら段差と認識しない程度のちょっとした敷居でもつまずくことがあります。

ほかにも、すべりやすいフローリング、手すりが設置されていない階段や玄関、浴室などは転倒リスクの高い場所です。

転倒を防ぐためには、ベッドや椅子の高さが適切か、廊下や階段、玄関、浴室に手すりが設置されているかなど、生活環境が本人の身体状況に合っているかどうかを確認し、対策を施しましょう。
外的要因の場合は、環境を整備することで転倒予防につながります。高齢者と同居している家庭であれば、危険な場所の改善は必須課題といえるでしょう。

内的要因

転倒につながる内的要因としては、病気や疾患、加齢による筋力の低下、身体機能の低下が挙げられます。
ほかにも、薬の副作用による足元のふらつきや眠気、意欲の減退なども転倒の原因となります。高齢者は複数の薬を飲んでいたり、体調の変化を口に出したりしないこともあるので、副作用が出ていないかを周囲が注意しておく必要があります。
転倒は、内的要因と外的要因が合わさることで、よりリスクが高まります。転倒を防ぐためには、内的要因・外的要因の両方を減らすことが大切です。

高齢者の転倒ホームイメージ2

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高齢者の転倒を防ぐには

高齢者の転倒を防止するためのポイントをご紹介します。

転倒しにくい環境を整える

自宅内での転倒は、安定した歩行や動作ができるように介護用品を活用したり介護リフォームを行ったりすることで予防できます。すべりやすい廊下や浴室に手すりを設置したり、床の段差をなくしたりするだけで、不安定な高齢者のバランスを落ち着かせるのに役立ちます。介護保険を利用すれば、介護リフォームは補助金の対象となりますので、自治体の窓口で相談してみるといいでしょう。

日頃から筋力とバランス感覚を鍛える

転倒を予防するためには、高齢者の筋力とバランス感覚の低下を防ぐことも大切です。普段からウォーキングや散歩をしたり、ストレッチで柔軟性を高めたりしておくことで転倒予防につながるでしょう。
その半面、無理な運動や体操をすると、それもまた転倒や骨折につながることがあります。高齢者の場合は、自宅でできる簡単なトレーニングがおすすめです。

<転倒予防につながる2つのトレーニング>

1.大腿四頭筋のトレーニング
背もたれに寄りかからないよう椅子に腰掛け、両手は椅子の端を軽く持ちます。片脚を上げて伸ばし、つま先は天井に向けます。そのままの状態で、膝上から太ももにかけて力を入れ、5秒間キープします。反対側の脚も同様に行います。

2.ふくらはぎの筋力を強化するトレーニング
椅子の背やテーブル、壁などに片方の手を添え、体を安定させます。足を肩幅と同じくらいに開き、両方のかかとをしっかり上げたら、ゆっくりとかかとを下ろします。顔を前に向けて行うことがポイントです。お腹やお尻など体幹部分に力を入れて行うとより効果的です。医療保険や介護保険を活用して、リハビリやマッサージ、デイサービス等を利用することでの筋力維持を行うことも効果的です。

転倒しにくい靴下や靴を選ぶ

筋力が低下した高齢者は足が上がりにくく、すり足になりがちなため、多少の段差でもつま先が引っかかって転倒しやすくなります。
そのため、高齢者の靴下や靴を選ぶときは、つま先が自然と反り上がる構造のものにすると、つまずきにくく歩き出しもスムーズになるでしょう。
また、靴底や足裏に滑り止めが付いているタイプのものなら、足をすべらせて転倒する可能性も低くなります。靴の場合は履いたり脱いだりすることを考え、マジックテープやファスナー付きのものを選ぶようにするといいでしょう。

高齢者の転倒イメージ3

身体状況に適した住宅環境の整備が転倒予防につながる

高齢者の転倒事故は、一度も行ったことのない、見慣れない場所ではなく、いつも生活している自宅でも多く発生しています。中でも認知症を発症している高齢者は転倒しやすく、とっさに手をついたりできないこともあるので、転倒がきっかけで寝たきりになる可能性もあります。
転倒を防ぐためには、高齢者本人が転倒しないように心がけたり、トレーニングしたりすることも大切ですが、一緒に暮らす家族も高齢者の状態や周囲の環境に注意しましょう。
そのためには、室内外の段差を解消したり、手すりをつけたりして、高齢者の身体状況に合わせた住宅環境を整えることが大切です。

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この記事の監修者

    

在宅緩和ケア充実診療所・機能強化型在宅療養支援診療所
城北さくらクリニック
院長 犬丸秀雄
HP:http://houmon-shinryo.jp/jsc/

日本大学医学部卒業後、日本大学板橋病院(麻酔科・救命救急・ICU)を経て、赤塚駅前クリニックを開業し往診も行う。平成24年より、東京都練馬区を中心に訪問診療専門の診療所を開設。
24時間体制、コールセンター設置等を整備し、医師11名・看護師5名(令和3年6月現在)でご自宅や施設へ訪問診療を行っている。

※本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。

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