認知症の人への対応と介護のポイント|症状を悪化させないために

 
ある日、家族が認知症とわかったら?認知症は本人にも家族にも切実な問題です。認知症という病気を正しく理解し、誤解や偏見なく対応することが求められます。
また、認知症の症状や原因を知ることで、予防や初期段階の対応に生かすことができます。
認知症の高齢者を家族介護することは容易ではありません。どうすればいいのでしょうか。
今回は認知症の人への正しい対応方法をご紹介します。

 

 
【目次】

  • 1. 認知症って何?もの忘れとどう違うの?
  • 2. あなたの親は大丈夫? 認知症の主な症状
  • 3. 認知症の人への対応のポイント
  • 4. 介護疲れしないための工夫
  • 5. 認知症を正しく理解して、患者と良い関係を

 
 

認知症って何?もの忘れとどう違うの?

認知症とは何でしょうか。もの忘れとはどう違うのでしょうか。まず認知症を理解するための基礎知識をお伝えします。

 
●認知症とは?
認知症という名称は、特定の病名ではなく、記憶などの情報をつなぎ合わせて適切に判断することができなくなっている状態を指します。以前は「痴呆症」と呼ばれていましたが、痴呆には「愚か」という意味もあることから、「認知症」と呼び方が変わりました。

 
日本神経学会では、認知症を「一度正常に達した認知機能が後天的な脳の障害によって持続的に低下し、日常生活や社会生活に支障をきたすようになった状態をいい、それが意識障害がないときに見られる」と定義しています。

 
体験したことの一部を忘れるのは、いわゆる「もの忘れ」です。例えば、昨日の食事は何を食べたかをふと思い出せないことはあっても、何かを食べたことは覚えています。落ち着いて記憶をたどると何を食べたか思い出せるでしょう。

 
しかし、認知症が進行すると、食べたものだけでなく、食べたこと自体を忘れてしまったり、メニューを教えられても思い出せなくなります。このように一般的なもの忘れと違い、認知症では日常生活にも支障が及びます。

 
●認知症の種類
認知症は、原因となる疾患によって種類が分かれます。

 
・アルツハイマー型認知症
認知症の中で一番多いとされ、脳に特殊なたんぱく質が溜まると生じると考えられています。症状としては、近時記憶の障害が目立ちます。例えば、昨日のことは思い出せないが、若い頃に習得した知識や身のこなしは忘れていないというのが典型です。

 
・レビー小体型認知症
アルツハイマー型認知症に次いで多く、レビー小体という特殊な物質が脳の神経細胞内にできることが原因で、幻視や見間違いが生じるとされます。無表情や筋肉がこわばり転倒しやすくなるパーキンソン症状が現れることも特徴です。

 
・脳血管性認知症
脳血管疾患(脳梗塞や脳出血など)が原因で発症します。身体のマヒや嚥下(えんげ=食べ物を飲み込むこと)障害、言語障害などが現れます。

 
特殊なたんぱく質の蓄積が原因と見られるアルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症については、たんぱく質の蓄積を抑えたり除去する薬が開発されて使用されています。また脳血管性認知症には血管障害を治療する薬が用いられます。

 
英科学誌『ネイチャー』に2016年9月に発表された「アデュカヌマブ」は、アルツハイマー病治療の新薬候補として研究が進められていて、これまでより原因物質を抑える効果が認められていることから、世界の注目が集まっています。

 
ただし、現時点では薬による治療は認知症の進行を遅らせることが限度といわれます。

 
 

あなたの親は大丈夫? 認知症の主な症状

認知症は身近な親族だけでなく、自分の身に起こるかもしれません。認知症の主な症状を挙げますので、チェックしてください。

 
●認知症の初期症状
「同じことを繰り返し言う」「以前はできていたことができなくなる」「同じ服ばかり着る」「物忘れや探し物の回数が増える
などが挙げられます。
自分の年齢や「今日は何年何月何日の何曜日か」「今の季節は何か」「今どこにいるか」などがわからなくなっている様子が見られたら、認知症の初期症状といえます。できるだけ早めに専門医の診察を受け、症状を悪化させないよう対処することが望まれます。

 
●中核症状
認知症の症状は大きく「中核症状
と「周辺症状
(BPSD)に分けられます。

 
中核症状には、「記憶障害」「見当識障害」「失認・失行・失語」「実行機能障害・判断力障害
があります。認知症の原因となる疾患によって脳細胞が委縮したり変性するために起こると見られています。

 
・記憶障害
食事の内容はもちろん、食事したこと自体を忘れてしまいます。薬を飲んだかどうかも忘れてしまうため、服薬治療を受けている場合は注意が必要です。

 
・見当識障害
日付や曜日、季節、さらには今いる場所がわからないという障害です。そのため外出したら戻れなくなる症状が現れます。

 
・失認、失行、失語
失認は五感の感覚が働かない状態です。
失行は、手足はマヒしていないのに、当たり前のようにできていた「歯みがき」や「ネクタイを締める」といった行動ができない状態のことを指します。
失語は言葉を聞く・話す・読む・書くという言語情報に関する機能が働かない状態です。

 
・実行機能障害、判断力障害
以前は段取り通りにできていた行動や善悪などの判断ができなくなる状態です。例えば、料理ができなくなったり、リモコンを使ってテレビのスイッチを入れられなくなる例がよく知られています。

 
これらの障害のために、認知症の人は過去・現在・未来という連続性の中で自分や物事をとらえることができなくなり、過去の記憶をたどることも未来を予測することもできず、不安な感覚に陥ってしまいます。
その結果、落ち着かない言動を取ったり、繰り返し同じ質問をしたりする行動が見られるようになります。

 
 
●周辺症状
脳の器質性の病変によって認知機能に障害を持つ人が現実生活に適応しようとしたときに生じます。具体的には「徘徊」「抑うつ」「失禁・弄便」「幻覚」「妄想」「睡眠障害」「暴言・暴力
などです。

 
・徘徊
あてもなく歩き回ることを指します。従来は目的もなくさまようと考えられていましたが、最近では認知症の人は何か目的があってどこかを目指しているという見方もあります。

 
・抑うつ
気分が落ち込んで活動することを嫌がる状態です。思考や感情が閉鎖的になる中で頑張り続けるとうつ病へと進展することがあります。

 
・失禁
意思に沿わず便をもらしてしまうことです。弄便は、排泄した便をいじり壁や床などにこすりつけたりする行為です。

 
・幻覚
実際には外部からの感覚的刺激が与えられていないにもかかわらず、刺激を受けたと感じたり、幻視や幻聴が起こります。

 
・妄想
例えば、誰も何もしていないのに、「財布を盗まれた」と思い込む状態が妄想です。いくら「誰も盗んでいない」と説明しても、認知症の本人は容易に理解できません。

 
・睡眠障害
眠れなくなる状態のことです。体内時計を司る神経が異常をきたすことにより起こります。昼夜逆転が当たり前になると、介護者の負担も大きくなります。

 
・暴言、暴力
いろいろなことが理解できなくなっている認知症患者の焦燥や怒りが、本人または他者に向けた攻撃的行為となって現れることがあります。普通の人なら我慢できることでも、認知症によって感情を抑えられなくなっていると考えられています。

 
 

認知症の人への対応のポイント

認知症の人への対応についてご紹介します。

 
対応方法のひとつは、自分が必要な存在だと認識させることです。本人ができることは何かを把握して、できることをお願いすると、達成感や互いの信頼感につながります。そのときは感謝の気持ちを伝えましょう。少し大げさに褒めるくらいで良いでしょう。

 
プライドを傷つけないことも大事です。「叱らない」「指摘しない」「否定・議論しない」よう注意しましょう。できるだけ相手の意思を受け止めて汲み取るようにして、穏やかな声で対応しましょう。何度も言い聞かせようとしても、認知症の人には意味がわからず、反感を抱かせることにつながります。

 
また、なるべく環境を変えないようにして、人間関係、生活環境、生活習慣を認知症の人のリズムやペースに合わせてあげることも大切です。
孤独にさせないで人と関わる時間を定期的に設けてあげましょう。在宅であれば時々話しかけたり、施設であれば他の入所者と顔を合わせ、交流する機会を設けると良いでしょう。孤独は不安感を募らせ、不安感は認知症を悪化させます。

 
認知症の人の行動をよく観察することも重要です。なんとなくソワソワしてきたらトイレに行きたそうだとか、今の介護を嫌がっていないか反応に注意するなど、さまざまな変化を見逃さない心掛けが必要です。

 
 

介護疲れしないための工夫

特に在宅で認知症の人を家族介護する場合は、家族にも身心の負担が大きく、疲労が溜まります。介護疲れしないための工夫についてご紹介します。

 
大事なのは、一人で抱え込まずに周囲を頼ることです。家族介護者は介護の専門家ではないのですから、一人でできないことがあって当たり前です。手始めに家族のほかのメンバーや親戚に相談しても良いでしょう。

 
また、専門機関に相談することも大切です。保健センター、高齢者相談センター(地域包括支援センター)、在宅介護支援センターなどさまざまな窓口で専門家に相談することができます。
自治体や福祉団体などが開催する介護教室に参加したり、介護の動画などで専門家から学ぶ方法もあります。

 
介護には休みがありません。しかし、介護する側にも一時的休止(レスパイト)は不可欠です。そのための支援をレスパイトサービスと呼び、介護保険を利用して介護サービスを受けることができます。

 
在宅で家族介護をする場合、ホームヘルパーによる訪問介護を利用すれば、家族介護者にとって一時的な休息になります。サービス内容は排泄、入浴などの身体介護、料理、洗濯などの生活援助です。

 
また、生活圏の地域にある介護事業所の利用者となって通所し、必要なときは宿泊もできる「小規模多機能型居宅介護」というサービスもあります。
「認知症対応型通所介護」は認知症の65歳以上の要介護者がデイサービスセンターなどを利用できるというものです。
一方、「認知症対応型共同生活介護」なら、グループホームで認知症の人たちが共同生活を送ることができます。

 
認知症の要介護者に対応している介護施設としては、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設(2017年度末廃止)があります。要介護度や本人の意思など状況に応じて効果的な利用を検討してください。

 
 

認知症を正しく理解して、患者と良い関係を

家族が認知症になると寂しさや、時には腹立たしい気持ちが湧いてくる人もいるでしょう。しかし、認知症の人は何もかもできなくなるわけではなく、できることもあります。認知症の人への愛情と病気に対する正しい知識を持って対応し、良い関係をつくっていくことが大切です。
ただし、家族介護は長期化すればするほど家族への負担が大きくなります。専門家の相談窓口や介護サービスなどを上手に利用して、無理のない介護を心掛けましょう。

(注)本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。

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