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嚥下障害とは?原因と対策を正しく理解して、毎日の食事を楽しく!

「嚥下(えんげ)障害」とは、食べ物を上手に飲み込めない状態のことです。嚥下障害があると、食事に苦労がつきまとうため、食べる楽しみが減ってしまいます。それだけではなく、そのまま放っておくと命を脅かす病気を招くこともあります。
嚥下障害は高齢になると誰にでも起こり得るものですが、状態を改善したり、嚥下障害に起因する病気を予防したりすることはできます。
では、飲み込む力と食べる楽しみを取り戻すには、どうすれば良いのでしょうか?
今回は、現在高齢者を介護している人に向けて、嚥下障害の原因と治療法、嚥下障害が引き起こす「誤嚥性肺炎」についてご紹介します。

※摂食嚥下障害(タイトル及び文章中、嚥下障害という)

嚥下障害イメージ1

嚥下障害とは?

嚥下障害についてあまり知らない人のために、嚥下障害の基礎知識と症状をお伝えします。

嚥下障害とは

私たちは食べ物を食べる時に、それがどんな食べ物なのかを正しく認識し、食べ物の硬さに合わせて噛み、飲み込んで胃に送ることができます。その一連の動作のうち、どこか1つでもうまく出来なくなることを嚥下障害といいます。食べ物を上手く飲み込めないと食事が取りづらくなるため、「低栄養や脱水を起こす」「食べ物が喉に詰まって窒息する」といった危険があるほか、高齢者の命を脅かす病気「誤嚥性肺炎」を引き起こす原因にもなります。

嚥下障害の症状

・食事中にむせる
特にむせやすいのは、味噌汁やお茶などの水分、または水分と固形物の入り混じった食べ物です。むせるのを避けようと水分を多く含むものをあまり取らなくなると、脱水につながります。飲食物だけでなく、自身の唾液でも咳き込む場合があります。

・固形物を噛んで飲み込めなくなる
硬い食べ物はよく噛まないと飲み込めないため、麺類などの柔らかいものや、噛まずに食べられるものを好むようになります。その結果栄養が偏り、低栄養につながります。

・食事をすると疲れる、最後まで食べきれない
時間をかけてよく咀嚼しなければ飲み込めなかったり、飲み込んでも口腔内に食べ物が残ったりするため、食事に時間がかかるようになります。食べられるものも制限されるため、食事自体の楽しみが奪われ、食べる意欲の低下につながります。場合によっては食事の途中で肉体的・精神的に疲れてしまい、出されたメニューをすべて食べきれないこともあります。

・食事の後、声がかれる
声質の変化も、よく見られる症状です。食べ物を飲み込んだあとに声がかすれたり、口腔内に食べ物が残留することから痰が絡みやすくなり、がらがらした声になったりします。

・体重が減る
食べる量が減る上、食事の内容が偏るため、低栄養状態になって体調を崩しやすくなり、体重が落ちていきます。

嚥下障害イメージ2

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嚥下障害の原因

嚥下障害の原因は「器質的原因」「機能的原因」「心理的原因」の3つに大別されます。
高齢者の嚥下障害は何が原因で起こるのでしょうか?

食べ物が口腔内から咽頭、食道、胃へと運ばれるまでには多くの器官が関わっていますが、嚥下障害はこれらの器官が何らかの理由で上手く働かないことが原因で起こります。

器質的原因

嚥下に関わる口腔内から胃までの気管に食べ物の通過を妨げる構造上の問題があり、うまく嚥下ができなくなるケースです。中でも原因として多いのは、口内炎や喉頭がんによる腫瘍、炎症などの後天的な形態異常です。唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)などの先天的な奇形が原因となることもあります。

機能的原因

器官の構造そのものには問題がなく、それらを動かす筋肉や神経に問題があって嚥下機能が衰えるケースです。
運動麻痺や認知機能障害を引き起こす「脳血管疾患(=脳卒中)」、または「パーキンソン病」に代表される神経と筋肉の伝達異常が生じる「神経筋疾患」が原因の可能性があります。抗精神病薬(こうせいしんびょうやく)や抗不安薬といった、薬剤の影響で各器官の働きが低下することもあります。

加齢により咀嚼や嚥下に必要な筋力が衰えるのも、機能的原因の一つです。筋力が低下すると飲み込むときに気道を閉じることができなくなり、食べ物が気管に入りやすくなります。

心理的原因

うつ病などによる食欲不振など、心因性の疾患が嚥下障害を引き起こすケースです。

嚥下障害イメージ3

嚥下障害が引き起こす「誤嚥性肺炎」とは?

嚥下障害が招く「誤嚥性肺炎」は、高齢者の死亡原因としても多くの割合を占める怖い病気です。

誤嚥性肺炎とは

通常、口腔内のものを飲み込むときは気管につながる部分が閉じています。しかし、嚥下障害があるとこの機能がうまく働かず、唾液や食べ物、胃の逆流物などが気管に入ってしまうことがあります。気管に入った唾液や食べ物に含まれる細菌が肺に送り込まれると、中で炎症を起こし、激しく咳き込んだり高熱が出たりといった症状が現れます。これが誤嚥性肺炎です。

日本において肺炎は、がん、心疾患、老衰、脳血管疾患についで5番目に多い死因です(厚生労働省「令和元年(2019)人口動態統計月報年計(概数)の概況」より)。肺炎で亡くなるのはほとんどが高齢者で、その中でも誤嚥性肺炎による死亡は7~8割以上を占めるといわれています(「70 歳以上の高齢者の誤嚥性肺炎に関する総入院費の推計値(2014年)」から引用)。高齢者は飲み込む際の気管を閉じる機能が衰えているため、誤嚥を起こしやすく、誤嚥性肺炎にかかりやすいのです。

また、胃の逆流物を誤嚥すると、それに含まれる消化液や酸で気道粘膜が損傷してしまいます。傷ついた気道粘膜は治りにくく働きも鈍くなり、誤嚥しても咳などでなかなか異物を追い出せなくなるので、一度誤嚥性肺炎にかかるとまた繰り返してしまう危険性が高くなります。

ちなみに日本人の死因の上位を占める脳血管疾患は、嚥下障害の原因の一つです。
嚥下障害の兆候を見逃さないことは、がんや脳の疾患、肺炎など、命の危険がある病気の早期発見や予防につながっています。

誤嚥性肺炎の症状

肺炎にかかると、通常、「高熱が出る」「激しく咳き込む」「呼吸が苦しくなる」「肺雑音がする」「黄色く濃い痰が出る」といった症状が現れますが、誤嚥性肺炎ではこうした症状がはっきり見られないこともあります。特に高齢者の場合は、病状が進んでも表に現れる症状は軽く見えることがあるので、重症化してから初めて気が付くという事態になりかねません。
「なんとなく元気がない」「ぼんやりしている時間が増えた」「唾液や食べ物をなかなか飲み込まない」「食後に疲労している」などの様子が見られたら、誤嚥性肺炎を疑いましょう。

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嚥下障害の治療法

最後に、嚥下障害の治療法をご紹介します。リハビリで劇的に改善するケースもあり、食べ物を使わないリハビリ運動なら自宅でも可能なので、すぐに実践してみてください。

嚥下障害は、歯科や耳鼻咽喉科に嚥下障害専門外来を設けている医療施設や、摂食・嚥下障害専門のリハビリテーション科などで受診しましょう。
治療には、リハビリで嚥下機能を改善する方法と、手術で嚥下機能を取り戻す方法があります。

リハビリ

・間接訓練
食べ物を使わない舌や口のトレーニングで、咀嚼と嚥下の機能を回復させます。

【リラクゼーション】
体に力が入っていると、嚥下に関わる器官を正常に動かせず、誤嚥しやすくなります。深呼吸したり肩や首を回したりしながら、頸部や肩を中心にストレッチを行い、上半身をリラックスさせます。高齢者は体がこわばりがちなので、体の力を抜く訓練が大切です。

【口唇・舌・頬の訓練】
手や器具を使って口唇、舌、頬を動かすトレーニングです。口周りの動きをスムーズにし、筋力のアップを図ります。

【のどのアイスマッサージ】
凍らせた綿棒に水をつけ、口腔内や喉を刺激して「嚥下反射」を誘発します。嚥下反射とは、食べ物を飲み込むときに反射的に器官にふたをする動きのことです。

【嚥下反射促通手技】
顎(あご)から下をマッサージして嚥下に関わる筋肉を刺激し、嚥下運動を促します。
後述する直接訓練の中で、口腔内に食べ物が残り嚥下運動が起こらない場合にも用いられる方法です。

【バルーン法(バルーン拡張法・バルーン訓練法)】
咽頭に嚥下の障害となるものがある場合に用いられる方法です。バルーンカテーテル(先端付近にバルーンが付いたカテーテル)を使用して、喉や食道を広げる訓練をします。

【呼吸訓練】
誤嚥防止のための訓練です。呼吸に使う筋力をアップして、痰や食べ物が気管に入ったときに強い咳で排出できるようにします。

・直接訓練
実際に食べ物を使用して嚥下のトレーニング行います。
咀嚼のいらないゼリーなどを丸呑みするところから始め、段階的に通常の食事に近づけていきます。

【嚥下の意識化】
食事に集中できる環境を整えたり、「飲みましょう」と声がけをしたりすることにより、通常無意識に行われる嚥下を意識的に行います。そうすることで口腔内の残留物を減らしたり、窒息や誤嚥を防いだりできます。その際、言葉での返事を求める声掛けはしないようにします。

【食品調整】
障害の度合いと患者の嗜好に合わせて、とろみ調整食品やゼリー化補助食品を用いたり、ミキサーを使って食品の柔らかさや形状を調整したりします。嚥下後の口腔内やのどの残留物を減らし、窒息や誤嚥を防ぐことにつながります。

【交互嚥下】
ベタつきやパサつきのある食品と、とろみのある食品やゼリーなどを交互に食べます。交互に食べることで固形物を食べても口腔内やのどに残りにくくなるという効果があります。

【複数回嚥下】
一口分の食べ物を何度かに分けて嚥下することで、のどの残留物をなくすことができ、誤嚥も防止できます。

・自分で行うリハビリ運動
【首と口周りの体操】
肩の力を抜いて首を前後左右に倒したり回したりして筋肉をほぐします。頬をふくらませたり引っ込めたりを繰り返し、舌も大きく前後に動かします。

【呼吸訓練】
腹式呼吸の練習を行い、呼吸に使う筋力を鍛えます。呼吸機能がアップすると、食べ物がのどにひっかかったときに適切に排出されるようになります。

【発声訓練】
「パ・タ・カ・ラ」の4音を大きな声で繰り返し発音して、嚥下に関わる器官を動かす訓練です。「パ」「タ」でそれぞれ口唇と舌の筋力を鍛え、「カ」でのどの奥を動かします。「ラ」で食べ物をのどに送るスムーズな舌の動きを鍛えます。

上記3つのリハビリは、自宅で食事をする前に行いましょう。食べる前にリハビリをすることで口周りの動きがスムーズになり、嚥下しやすくなります。

手術

重度の嚥下障害では、リハビリによる嚥下機能の回復や改善は見込めません。その場合は障害が起きている部位に応じた手術を行います。
手術は、大きく分けて「嚥下機能改善手術」と「誤嚥防止術」の2つです。

・嚥下機能改善手術
誤嚥をできるだけ減らし、口からの食事を可能にします。もちろん手術だけで嚥下機能が完全に回復するわけではないので、食事を取るためには術後のリハビリが必須です。

・誤嚥防止術
嚥下機能改善手術をしても嚥下機能の回復や改善が見られない場合は、「誤嚥防止術」が適用されます。食道と気道を分離する手術で、名前の通り誤嚥の防止を目的としています。しかし発声機能が失われるリスクがあるため、手術には医師による慎重な判断と、患者、家族の理解が必要です。

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嚥下障害の危険性を理解し、正しい対策を

嚥下障害は、高齢者であれば誰にでも起こり得る障害です。嚥下障害の症状が見られたら、リハビリなどで嚥下機能を回復させ、誤嚥を防いで誤嚥性肺炎を引き起こさないことが重要です。また、嚥下障害のある人が食べにくい食品、誤嚥を起こしやすい食品をあらかじめ把握しておきましょう。
そのほか、口腔内の細菌を繁殖させないように歯磨きなどの口腔ケアをしっかり行うことも大切です。
嚥下障害の正しい対策を実施し、誤嚥性肺炎を防ぎましょう。

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この記事の監修者

嚥下障害イメージ5

医療法人社団高輪会 人事部教育研修課
歯科医師 成平恭一 歯科衛生士 渡辺昭子 言語聴覚士 岡島雅美
公式HP:https://www.takanawakai.or.jp/

医療法人社団高輪会、昭和54年設立。
訪問歯科を中心とした医療法人で、全国の歯科医院に先駆けて専用の訪問診療車を導入するなど訪問歯科を積極的に運営。訪問歯科のほか学術研究に裏打ちされたノウハウと技術で、外来診療や審美歯科など幅広い歯科サービスを提供。人事部教育研修課はグループ従業員数歯科医師、歯科衛生士含め約650人の研修を取りまとめる。

※本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。

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