杖の種類と特徴|目的別に上手に選んで足腰への負担を軽減!


 
杖は、足の不自由な方や筋力の衰えた高齢者に自分で歩く喜びや、行きたいところへ出かけられる楽しみを与えてくれる道具の一つです。
一昔前は、種類がそれほど多くなく選択肢が限られていましたが、高齢化社会の中で需要が伸びるとともに、杖のバリエーションも増えてきました。今では、介護度の高さ、色、素材、デザイン、価格などに応じて好きなものを選べるようになっています。
そこで今回は、自分にぴったりの杖を選んで毎日の生活をより充実させたいと考えている方とその家族のために、杖の種類や特徴、正しい選び方についてご紹介します。
 

【目次】
1.杖の目的と役割
2.杖の種類と特徴
3.杖の上手な選び方
4.杖の正しい使い方
5.最適な杖を選び、生活の質の向上を
 
 

杖の目的と役割

 
杖を使用すると、具体的にどのような効果を得られるのでしょうか?杖を日常生活に取り入れるメリットをお伝えします。
 
●歩行を安定させる
加齢とともに身体機能は低下していきます。特に足腰の筋力が衰えると、2本の足で歩くことが難しくなります。杖は、そういった高齢者の第三の足という役割を担い、体を支えて歩行の安定を助けます。
また、杖を使用することで身体のふらつきを抑えられるため、リズミカルに歩けるようになります。
 
●足腰にかかる負担を減らす
「脚や腰が痛くて歩けない」といった問題を抱える高齢者にも杖は有効です。杖に体重をかけ、足腰で支えている体重を分散させることで、負担が軽減され、痛みが和らぐことにつながります。
 
●安心感をもたらす
歩行が困難になると、転倒によるけがを恐れて外出を控えてしまいがちですが、杖で体を安定させれば、安心して歩くことができます。そうすれば、「人の手を借りずに自分の足で歩いている」という自信になり、外出の楽しみが増えるでしょう。
また、視力が落ちている高齢者の場合、杖を使うことで足元の障害物に気付けたり、転倒や衝突を防げたりします。そういった点も安心感をもたらします。
 
 

杖の種類と特徴

 
最適な杖を選ぶためには、杖の種類と特徴を把握することが重要です。ここでは、介護の現場で使用される杖をピックアップし、それぞれの特徴や長所についてご紹介します。
 
●T字杖
・杖の特徴
真っすぐな杖に握り手が付いている最もスタンダードなタイプです。誰でも扱いやすく、デザインの種類が豊富という特徴があります。
グリップ部分を握り、杖の先を地面について歩きますが、特別な扱いは必要ないため、初めて使用する人もすぐに慣れることができます。シンプルな形状で比較的軽量のため、高齢者が持ってもそれほど負担になりません。
T字杖には、普段使いタイプのほかにも、持ち運びや収納に便利な折りたたみタイプ、伸縮性のあるタイプなどがあり、好きな色やデザインを選べます。お気に入りの1本を探してみましょう。
 
・T字杖に適している人
基本的に、杖がなくても自力で歩ける状態の人におすすめです。T字杖はあくまでも歩行のサポート用であり、体重の約6分の1までしか補助できないからです。
 
●ロフストランド杖
・杖の特徴
上部に前腕を通す輪っか(カフ)、下部に握り手(グリップ)がついた杖です。「ロフストランドクラッチ」と呼ばれることもあります。
ロフストランド杖の特徴は、サポート力の高さや高い安定感などです。カフとグリップの2カ所で体重を補助するため、T字杖と比べて体重が分散しやすいという特徴があります。握力が弱っている高齢者の歩行も安定しやすいでしょう。
また、「カフ」には前腕をはめやすいU字タイプと、しっかり固定できるO字タイプがあり、身体レベルに応じて適したものを選べます。
 
・ロフストランド杖に適している人
握力が弱っている方や身体に麻痺がある人に向いています。手が変形している場合や、下半身に体重をかけることはできても、筋力が足りずに支えきれない場合など、T字杖を上手に使えないときにロフストランド杖を選びましょう。
 
●松葉杖
・杖の特徴
松葉杖は、脇あてとグリップが付いているタイプの杖です。骨折したときに使うイメージが強いかもしれませんが、歩行の際に使うと、身体の左右バランスを補正してくれるというメリットがあります。特に2本1組で使用する場合は、上半身だけで体重の大半を支えられるため、T字杖やロフストランド杖と比べると、下半身にかかる負担を大幅に抑えることができます。
また、松葉杖は意外にも素材などの種類が豊富で、アルミ製の軽量タイプや手に馴染みやすい木製のタイプのほか、伸縮性のあるタイプなどもあります。リハビリ時だけでなく、長期的な使用を考えている場合は、自分に合ったものをレンタル・購入すると良いでしょう。
 
・松葉杖に適している人
骨折や捻挫をしている人をはじめ、下半身の麻痺や股関節症などがあり、下半身をサポートしたい人に有効です。ただし、松葉杖を使用するにはある程度の幅が必要となるため、松葉杖を使用するにはある程度の幅が必要です。自宅で十分なスペースを確保できない場合は、住環境を見直してみましょう。
 
●多脚杖
・杖の特徴
多脚杖とは、地面と接する杖先が1点であるT字杖に対して、杖先が3点、あるいは4点の杖のことです。支えてくれるポイント(支柱)が多く、安定性が高いという特徴があります。
多脚杖は段差のない平らな場所(病院や介護施設)などでは非常に便利ですが、段差のある屋外では不安定になりやすく、かえって転倒するおそれもあります。購入する際は、使用する場所や環境を考慮しましょう。
 
・多脚杖に適している人
T字杖では足元が安定しない、脚力が低下している、という人におすすめです。杖先が4点で安定しているため、姿勢が悪い人や、背骨が曲がった人にも適しています。
また、自宅内や施設・病院内の移動がメインの場合に向いているでしょう。
 

杖の上手な選び方

 
 
杖の種類と特徴を踏まえた上で、自分に合うものの選び方をお伝えします。
 
●適切な長さのものを選ぶ
体にフィットした杖を選ぶポイントは「長さ」です。快適に歩くためには、自分の身長に合った最適な長さの杖を選ぶのが重要です。最適な長さの目安は、「身長÷2+3」という計算式で導き出せます。
 
(例)身長170センチメートルの方の場合
170÷2+3センチメートル=理想的な杖の長さは88センチメートル
 
ただし、上記数値はあくまでも目安です。実際に購入する際は、計算式だけで決めず、利用者本人が実際に手に取って、使いやすいものを選んでください。
 
●握りやすいグリップを選ぶ
杖のグリップ部分は、利用者にとって最も握りやすいものを選びましょう。手の大きさや、好きなデザイン、握力などによってフィットするグリップは異なるため、一度実物を握ってから検討してください。
 
●素材と太さにこだわる
日常的に杖を使用するようであれば、「軽さ」と「丈夫さ」が使いやすさのカギとなります。杖は一般的に棒部分(シャフト)が太いほうが丈夫ですが、太いとその分重くなります。購入前は実際に自分でついてみて、重さと安定感のバランスが一番良いと思うものを選びましょう。
 

杖の正しい使い方

せっかく自分に適した杖を選んでも、使い方が間違っていると上手く力が入らなかったり、転倒を誘発したりする可能性があります。杖の正しい使い方を理解しておきましょう。
 
●T字杖
・正しい持ち方(握り方)
麻痺などがない足側の手を持ち手にしてください。グリップは人指し指と中指で挟むように握ります。
 
・歩き方
T字杖を使う場合、「3点歩行」が一番安全とされています。正しい3点歩行をするには、「杖を出す」→「痛いほうの足(杖と反対側の足)を出す」→「痛くないほうの足(もう片方の足)を出す」→「杖を出す」という動作を繰り返します。
 
●ロフストランド杖
・正しい持ち方(握り方)
基本的にはT字杖と同様に、人差し指と中指で挟むように握ります。ただし、ロフストランド杖の場合はグリップ上部に前腕を通すカフがあります。カフとグリップの位置が近すぎると手首に負担がかかりやすくなるため、自分に合った長さに調節してから使用しましょう。
 
・歩き方
基本的にT字杖と同じ「3点歩行」が最も危険が少ない歩き方とされています。
 
●松葉杖
・正しい持ち方(握り方)
杖先は、足の前と外側から15センチメートルほど離したところに置きましょう。脇下に指2~3本分の隙間を開け、肘の関節を軽く曲げてグリップを握ります。
 
・歩き方
T字杖と同様、まずは松葉杖の杖先を前方に出します。次に、脇あて部分を腕と上半身で挟み、グリップ部分に体重をかけます。松葉杖に体重をかけたら、麻痺などがないほうの足を前に出して進みます。
 
●多脚杖
・正しい持ち方(握り方)
グリップの握り方はT字杖と同様です。グリップの位置が、肘を30~40度曲げた状態の位置にくる長さのものを選びましょう。
 
・歩き方
T字杖と同様、「3点歩行」が最も安全とされています。
 
 

最適な杖を選び、生活の質の向上を

 
 
杖には、外出できる喜びや、高齢者の自立心を維持してくれるというプラスの役割がありますが、選び方や使い方を間違えると、かえって身体機能を損なう原因になるおそれもあります。
杖を選ぶときは、素人判断ではなく、理学療法士や介護スタッフなどから客観的なアドバイスを受けることをおすすめします。
体に適した杖に出合えれば、日常をより豊かにすることができるでしょう。

(注)本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。

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