排泄介助のポイントとは?適切な排泄方法の選び方と介助の手順


 
排泄は人間が生活する上で必要不可欠な生理現象です。排泄を助ける「排泄介助」は、介護において最も重要なケアの一つといえます。
しかし被介護者側は、他人の手を借りて排泄することを「恥ずかしい」「情けない」と感じてしまうものです。では、被介護者の尊厳を傷つけないように配慮した、最適な排泄方法とはどんなものでしょうか。
今回は、排泄介助のことでお悩みの介護者や、これから介護を始める人のために、排泄介助のポイントや正しい方法についてご紹介します。
 

【目的】
1.排泄介助のポイント
2.被介護者に合った排泄方法の選び方
3.トイレでの排泄介助の方法
4.便器や尿器を使用する排泄介助の方法
5.排泄の自立は生活の自立につながっている
  

排泄介助のポイント

 

 
若い頃は問題なくできていた排泄ができなくなると、本人もショックを受けるものです。その気持ちに寄り添いながら、排泄を上手にケアするポイントをお伝えします。
 
●自尊心を傷つけない
排泄は非常にプライベートな行為であるため、ほとんどの人は誰かの手を借りることに抵抗があるものです。失禁などの失敗をしたときにネガティブなこと言われると、自尊心が傷つき他の生活機能にも影響が出る可能性があります。排泄に失敗したときの言葉がけには十分注意し、反対にうまくできたときは、一緒に喜ぶようにしましょう。
 
●水分の摂取を控えさせない
排泄が思い通りにいかなくなると、排泄そのものの頻度を減らそうと、自ら水分摂取を控えるケースがあります。しかし、体に必要な水分を蓄える機能が低下している高齢者は、十分な水分をとらないと脱水症状や便秘になってしまいがちです。さらには、脳梗塞などの一因になる可能性もあります。
排泄の失敗を気にすることよりも、体内の水分が不足することの危険性を伝え、水分を積極的にとってもらいましょう。
 
●自力でできることを増やす
失禁の回数が増えると、介護する側はおむつの使用を考えるかもしれません。そのほうが処理に時間がかからないからです。しかし、まだ尿意や便意の意思表示が可能なのに、おむつに排泄させることは、自尊心を傷つける行為と受け取られがちです。
また、トイレまでの移動がなくなる分の運動量も減り、筋力が衰えるというデメリットもあります。
おむつの使用は最後の手段と考え、できることは自分でやってもらうことで、排泄の自立を目指しましょう。
 
●時間を決めてルーチン化する
1日のスケジュールの中で、例えば食事の後や外出の前など、決まったタイミングで排泄する習慣をつければ、失敗の回数を減らすことができます。
  

被介護者に合った排泄方法の選び方

 

 
必要な介護のレベルは人それぞれなので、トイレまで歩ける人もいれば、寝たきりの人もいます。被介護者に適した排泄方法の選び方をご紹介します。
 
●排泄方法の種類
適切な排泄方法を選ぶために、まずは排泄方法の種類とそれぞれの特徴を把握しておきましょう。
 
・トイレ
家庭にある一般的なトイレです。足腰が弱い高齢者には、和式よりも、腰かけられる洋式がおすすめです。転倒防止用の手すりなどがあるとさらに便利です。
 
・ポータブルトイレ
寝室などトイレ以外の部屋に置ける、持ち運びタイプの便器です。本体と便座、排泄物を入れるバケツ、バケツのふたなどが一体になっていて、トイレまでの移動が難しい人に向いています。日中は普通のトイレを使い、暗くて移動が危ない夜間のみ、ポータブルトイレを使用するという方法もあります。
 
・便器と尿器
寝た状態で尿や便を受けることができる容器です。尿意や便意はあるものの、ベッドから起き上がれない人に向いています。尿器には男性用と女性用があります。
 
・おむつ
下腹部に直接つけ、そのまま中に排泄できるものです。素材は紙タイプと布タイプ、形状はテープタイプとパンツタイプがあります。インナーである吸水パッドと、アウターであるおむつやパンツを組み合わせて使います。尿意や便意がない人に向いています。
 
●排泄方法の選び方
被介護者の体の状態により、適した排泄方法は異なります。
 
・トイレまで自力で歩ける場合
介助があれば自力で歩ける人は、普通のトイレを使用すると良いでしょう。トイレで排泄できれば自信につながるだけでなく、家の中を定期的に動くことで、筋力維持にもつながります。
 
・自力で起き上がれる場合
歩くのは難しいものの、介助があれば自力で起き上がれる人には、ポータブルトイレをおすすめします。ベッドのすぐ近くに置けるので、トイレまで移動しなくても自分で排泄できます。
 
・姿勢を変えられる場合
介助があれば姿勢を変えられる人には、差し込み式の便器や尿器が適しています。可能であれば、自分で容器を陰部にあて、排泄してもらいましょう。そのほうが、自尊心を保てるからです。
 
・寝たきりの場合
尿意や便意を自分で伝えられる人は差し込み式の便器や尿器を使用するほうが良いですが、意思疎通ができない人、尿意や便意がない人は、おむつの使用を考えましょう。
  

トイレでの排泄介助の方法

 

 
被介護者がトイレやポータブルトイレを使用できるケースでの正しい介助方法をご紹介します。
 
●トイレまで自力で移動できる場合
1. 排泄のタイミングを見計らい、トイレまで誘導します。廊下に障害物がないか、本人がしっかりと歩けているかなどを観察し、安全に移動できるように見守りましょう。
 
2. トイレに着いたら、自分でできることは自分でしてもらい、できないことに対してのみ、手助けをします。プライバシーに配慮して、手早く対応するよう心がけましょう。
 
3. 便座に座ったとき、床に足がしっかりついているかどうか確認します。
 
4. 排泄の間は、ドアを少しだけ開けた状態にしてもらい、外で待ちます。
このとき、物音を立てず、介護者の存在を気にせずにゆっくりと排泄できるよう、配慮してあげましょう。
 
※ 安定して座れず、転倒の危険がある場合は、便器の横で見守ります。
 
5. 排泄が終わったら声をかけてもらうか、ブザーのようなもので知らせてもらい、自力でトイレットペーパーを取ったり、拭いたりできない場合は、代わりに手早く行います。
このとき、排泄物を観察して健康状態を把握しましょう。
 
6. トイレで瞬間的に力を入れると、血圧が上がることがあります。特に高血圧の症状がある人は、めまいなどが起きていないか確認してください。
 
7. ズボンを上げるなど、自分でできることは自分でやってもらい、できないことのみを介助します。
 
8. 上手に排泄できたことを一緒に喜んだり、排泄物の状態から体調が良さそうであることを伝えたりしてあげましょう。自信のつく言葉をかけてあげることが大切です。
 
●ポータブルトイレを使用する場合
ポータブルトイレを使う場合も、可能な限り本人に任せ、できないことのみを介助するようにしましょう。
 
1. 手助けしながら体を起こし、ポータブルトイレまで移動してもらいます。
 
2. フタがついているタイプの場合はフタを開け、ズボンを下ろして転倒に注意しながら便座に座ってもらいます。下腹部にタオルをかけるなど、プライバシーに配慮してください。
 
3. 床に足がしっかりついているかどうかを確認します。
 
4. 排泄が終わるまで近くで待機し、終わったら知らせてもらいます。
自力でトイレットペーパーを取ったり、拭いたりできない場合は、代わりに手早く行います。
 
5. ズボンを上げるなど、自分でできることは自分でやってもらい、できないことのみをサポートします。
 
6. めまいなどがないか確認し、ベッドに戻ってもらいます。戻ってからも体調確認をしてください。
 
7. 介護者は排泄物を観察して健康状態を把握し、トイレまで持って行って流します。
 
8. 大体の汚れをトイレットペーパーなどで拭き取って流し、バケツを洗います。室内でポータブルトイレを使用するとにおいが気になるので、できるだけ早く処理しましょう。
 
 

便器や尿器を使用する排泄介助の方法

 
トイレやポータブルトイレでの排泄が難しい高齢者は、ベッドで寝た状態でも使用できる便器や尿器を使うことになります。トイレでの排泄よりもプライバシーに配慮する必要があるため、正しい使い方を知っておくことが大切です。
 
●便器と尿器の種類
被介護者に最適な器具を選ぶために、便器・尿器の種類とそれぞれの特徴を覚えておきましょう。
 
・男性用尿器と女性用尿器
寝た状態でも尿を集めることができる容器です。男性用と女性用で陰部にあてる形が異なり、こぼれにくくする工夫が施されています。
 
・差し込み型便器
寝た状態のまま尿や便を取ることができる容器です。仰向けの状態でお尻の下に座面を入れて使用します。プラスチック製の軽量のものが一般的です。
 
・ベッドパン型便器
寝た状態のまま尿や便を取ることができる容器です。差し込み型便器よりも大型で容量も大きいため、体格の良い人でも安心して使用できます。ステンレス製のものが多く重たいので、介護者に力が必要です。便器に厚みがあり、腰を上げられる人に向いています。
 
・ゴム製便器
寝た状態のまま尿や便を取ることができる容器です。仰向けの状態でお尻の下に便器を入れ、空気を入れてゴム部分をふくらませます。ベッドパン型よりもやわらかく、自力で腰を上げられない人でも使えます。塩化ビニル製のものが多く軽量のため、力のない介護者でも扱いやすい半面、洗いにくいというデメリットがあります。
 
●尿器を使用する手順
尿器はガラスやプラスチックなど、さまざまな素材のものがあります。被介護者の好みや介護者にとって使いやすいものを選びましょう。
 
1. 男性は仰向けか横向きに寝た状態で、女性は仰向けの状態で、尿器の受け口を陰部にあてて使用します。
女性はお尻のほうにトイレットペーパーかタオルを敷いておくと、ベッドを汚しにくいでしょう。
 
2. ズボンを下ろす、尿器をあてるなど、できることは自力でやってもらいましょう。
それらを介護者が行う場合は、下腹部にタオルをかけてプライバシーに配慮してあげてください。
 
3. 排尿が終わったら陰部を拭き、衣服を整えます。
 
4. 尿をトイレに流しに行き、尿器を洗います。
排泄後の処理も、できることは自分でやってもらえば、排泄の自立につながります。
 
●便器を使用する手順
1. 汚れ軽減と、飛びはね防止のために、あらかじめ便器の中にトイレットペーパーを敷いておきます。
 
2. トイレットペーパーを敷いたら、被介護者が仰向けに寝た状態で便器をお尻の下に入れます。
ゴム製便器の場合は、このときに空気を入れてふくらませます。
 
3. ベッドにリクライニング機能があるなら、上体を起こして腹圧がかかるようにしましょう。ない場合は、背中に枕やクッションを入れると上体が起きます。
 
4. 介護者が便器を持つ場合は、下腹部にタオルをかけ、プライバシーに配慮します。
 
5. 排泄が終わったらトイレットペーパーで陰部を拭き、衣服を整えます。
 
6. 排泄物をトイレに流しに行き、便器を洗います。
排泄物を観察し、健康状態を把握しましょう。
 
 

排泄の自立は生活の自立につながっている

 

 
排泄を介助してもらう高齢者は、介護者に対して申し訳ないという気持ちや、恥ずかしさ、情けなさを少なからず感じています。その気持ちに寄り添わずに、介護者が効率の良さだけを優先してしまうと、被介護者の自尊心が傷つき、生活に対する意欲が低下することもあります。それが原因で認知機能に良くない影響があるおそれもあります。
一方、自力で排泄することは被介護者にとっての自信となり、生活機能の向上につながることも期待されます。
つまり、できることは可能な限り本人に任せて、自立を促すことが、排泄介助の大切なポイントといえるでしょう。

(注)本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。

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