遠距離介護の始め方と成功させるポイント。親と自分の負担を軽減


 
「遠距離介護」という言葉を聞いたことはありますか?遠距離介護とは、離れて暮らす高齢の両親が自立した生活を送れるように、子供がサポートすることです。「両親のそばにいて面倒をみてあげたい」という気持ちがあったとしても、親に介護が必要な時期は、大抵の場合自分も働き盛りの年齢です。自分自身が家庭を持っている場合、仕事と家庭、介護のすべてをうまくこなすのは相当な労力になるでしょう。
今回は、離れて暮らす両親が心配な人のために、遠距離介護についてご紹介します。

 
【目次】
1.遠距離介護を決断する理由と始める前の準備
2.遠距離介護のメリット・デメリット
3.遠距離介護を成功させるポイント
4.遠距離介護で利用したいサービス
5.周囲の協力を仰ぐことが遠距離介護成功の鍵
 

遠距離介護を決断する理由と始める前の準備

子供はいつまでも親のことを大切に思うもの。ただし、遠距離介護を決断せざるを得ない場合があります。
 
●遠距離介護を選択する理由
・親は住み慣れた土地のほうが過ごしやすい
住み慣れた土地を離れるのには勇気が必要です。これまでその土地で築いた人間関係や、かかりつけの病院などを捨てて、知っている人の少ない場所へ生活の拠点を動かすのが不安なのは仕方ありません。また、高齢者の中には環境の変化にうまく対応できず、住む場所が変わると認知症を発症したり、症状が悪化したりする人もあります。
新しい環境への移り住みは、高齢者からすると心身ともに負担が大きくなりがちです。
 
・介護する側にも社会的な立場がある
両親が介護を必要とする年齢になる頃には、子供は管理職など社会的に高い地位を得ていたり、妻と子供がいて休日は家族との時間を大切にしていたりと、現在の場所で生活の拠点を築いていることがほとんどです。その場合、現在の生活拠点を離れ、地元に帰省して親の介護だけに専念するのは難しいでしょう。
 
●遠距離介護を始める前の準備
・家庭内での話し合い
介護の方法や、利用可能な介護サービス、介護にかかる費用負担などさまざまな点で家族内の話し合いが必要です。遠距離介護の場合は、介護そのものにかかる費用だけでなく、交通費なども考慮しなくてはなりません。
 
・親の日常生活や交友関係の把握
親の日常生活を把握していれば、「どの時間帯に連絡をとればよいのか」ということだけでなく、「何を不自由に感じているのか」などを確認しやすくなります。また、交友関係を把握して、親の友人と信頼関係を築いた上で、何かあったときに対応してくれるよう頼んでおくことも大切です。
 
・親の預貯金や生命保険等の把握
親の預貯金や生命保険類を確認した上で、介護の方向性を決める必要があります。また、認知症になると悪徳商法などにも引っかかりやすくなるため、印鑑や権利証など貴重品類を確認しておくことも重要です。介護負担が大きくなると家庭内や周囲の人間との不和へつながったり、金銭トラブルにエスカレートしたりする可能性もありますので、しっかり確認しておきましょう。
 
・介護施設等の把握
「遠距離介護」は、被介護者側がある程度自立した生活を送れることが前提です。そのため、認知症や身体的な事情などで自分一人での生活が難しい場合には、施設の利用を考えなければなりません。施設にもそれぞれ利用条件があるため、被介護者にどのような疾患があり、利用可能な施設にはどんな種類があるのかを把握しておく必要があります。
 
例えば、65歳以上で脳梗塞やくも膜下出血などの脳血管疾患や認知症などを患っている人の場合、介護療養型医療施設への入所が可能です。医療措置が目的であり、重症度が高い高齢者が優先的に入所できます。
入所するには、希望する施設に書類を提出し、面談や健康状態などによって判定を受ける必要があります。もし夫婦で入所したいという場合は、サービス付き高齢者住宅や有料老人ホームなどを検討することも可能ですが、入所条件や一時金、受けられるサービスの内容は各施設で異なるため、入居者のニーズに合っているかどうかを確認しましょう。
 
・介護にかかる費用の把握
介護サービスを利用する場合は、介護認定を受け、介護保険サービスを利用して自己負担を減らすのが基本です。介護保険サービスを利用しないと、すべて自己負担しなければなりません。要介護認定を受けた後は、ケアマネジャーに相談し、利用可能なサービスを検討してもらいましょう。状況に合わせて、福祉用具のレンタルや配食サービスなども考慮しておくことをおすすめします。
 
・周囲の人やかかりつけ医との連携
遠距離介護を続けていくには、周囲の支援や協力は欠かせません。身体的に不自由さを抱えた場合、孤独感を抱えがちですが、近隣や友人へ様子を見にいってもらうように声をかけておくと安心です。かかりつけの医師とも小まめに連絡をとり、必要なときはすぐに対応してもらえるようにしておきましょう。
また、民生委員の手を借りることも重要です。民生委員は住民の相談に乗ったり、生活支援を行ったりと幅広く活動しています。
 
・住宅リフォーム
要介護認定を受けている場合、高齢者一人あたり20万円までの助成金が支給されます。リフォームを希望する場合は、担当ケアマネジャーに相談し、検討してもらいましょう。
助成金の申請方法や必要書類は状況により異なるため、担当のケアマネジャーに尋ねてから準備を進めてください。介護度が重くなると、これまでと同じような日常生活は難しくなるため、生活の質を守るためにも、ある程度健康なうちにリフォームしておくことをおすすめします。
 

 

遠距離介護のメリット・デメリット

離れて暮らしているからといって、遠距離介護にはデメリットしかないわけではなく、メリットも存在します。
 
●メリット
・転居しなくてよい
遠距離介護の場合は、介護者自身は住む地域を離れなくても良いため、介護のために仕事を辞める「介護離職」を避けることができます。年齢的にも再就職が困難な年代の人にとって、介護のために退職することは大きなリスク。避けるに越したことはありません。
 
・介護保険のサービスを利用しやすい
認知症だけでなく、脳疾患の後遺症などで施設の利用を検討することもあると思いますが、遠距離介護のケースでは、そういう人たちの入所の優先順位が高くなる傾向があります。都心部をはじめ、入所待機者が飽和状態の地域も多いので、少しでも早く入所できるのはメリットです。
 
・介護ストレスが軽減される
被介護者とともに生活しているわけではないので、介護負担が偏ることなく、常時介護に関わるよりもストレスが軽減されます。介護者が結婚している場合は、身近に頼ったり相談したりできる家族もいるため、精神的な負担も軽くなります。
 
●デメリット
・費用がかかる
住宅改修費や介護サービス利用費、福祉用具レンタルなどは介護保険の範囲内で賄える部分もありますが、遠距離介護にはそれ以外に通信費や帰省費用がかかります。
通信費とは、各事業所やケアネジャーとの電話の際にかかります。無料通話アプリや割引を利用し、交通費に関しては各種割引サービスを検討することをおすすめします。
帰省費用についても、交通費のみではなく、お世話になっている近隣や友人へのお土産代などが必要なこともあり、決して小さな負担とはいえないでしょう。
 
・何かあった場合に早急な対応ができない
毎日様子を見られる状況ではないため、事故が起きたり容体が急変したりしたときに早急な対応ができません。本人と小まめに連絡をとるとともに、緊急時に対応してもらえるよう普段からケアマネジャーや近隣住民とのコミュニケーションを図っておくことが重要です。
 

 

遠距離介護を成功させるポイント

遠距離介護を成功させるために重視すべきポイントをお伝えします。
 
●コミュニケーションを密にする
親や周囲の人々とのコミュニケーションを増やしていくことが大切です。親は「子供に負担をかけたくない」と思いがち。体の不調や困り事があっても言い出せずに状況が悪化することがあります。連絡を密にとり、今の状況を細かく確認することが、後々のトラブルを未然に防ぎます。
 
●近所の人や専門職の協力を仰ぐ
ケアマネジャーとの電話や連絡は小まめに行い、帰省した際には近隣住民と良好な関係を築いておきましょう。遠距離介護を選択した人の多くは地元に頻繁に帰省するのが難しいと見られるため、日頃から様子を気にかけてくれる近隣住民やケアマネジャーの存在はありがたいものです。
 
●サービスや制度を積極的に利用する
介護保険サービスのほかにも、自治体や民間のサービス、民生委員などのボランティアが提供しているサービスなどがあります。親を常にサポートできない状況なのであれば、それらのサービスを積極的に活用しましょう。
 
●介護費用は親の貯金で賄う
金銭面の話はトラブルにつながりやすいため、介護費用は基本的に親自身のお金で賄えるように計算することが大切です。介護は親の生活の質を保つために行うものなので、親が老後のために貯めた資金を充てるのは理にかなっています。
事前によく親と話し合いをし、預貯金や貴重品類の把握をしておきましょう。
  

遠距離介護で利用したいサービス

さらに安心な遠距離介護を目指すのであれば、見守りサービスや費用負担を減らせるサービスなどを活用しましょう。各種サービスとその内容についてご紹介します。
 
●見守りサービス
自治体による安否確認サービスや配食サービス、企業によるセンサー型の見守りサービスなど、さまざまな種類があります。中には郵便配達の際に高齢者の様子を確認してもらえるタイプもあります。地域によってその内容は多岐にわたるので、親が住んでいる地域で作成された高齢者向け冊子などを取り寄せてみてください。自治体の公式Webサイトから確認するか、直接連絡をしてみましょう。
 
●航空会社の介護帰省割引
頻繁に帰省できる人は、航空会社が提供している介護帰省割引を活用しましょう。
利用できる条件は、被介護者が「二親等以内の親族」「配偶者の兄弟姉妹の配偶者」であることです。
申し込みには「介護保険証・介護認定通知」「戸籍謄本か抄本」「現住所記載書類」などが必要なので、各航空会社へ問い合わせてみましょう。
なお、介護割引があるのは「JAL」「ANA」「SFJ(スターフライヤー)」の3社です。介護帰省割引よりも格安航空券のほうが安い場合もあります。格安航空券はスカイチケットから購入できるので、なるべく交通費を安く抑えたいという人は検討してみましょう。
 
●コミュニケーションロボット
コミュニケーションロボットは、簡単な会話だけでなく、高齢者向けのレクリエーションなどを行うこともできます。孤独になりがちな高齢者にとって良い刺激になり、認知症の進行を遅らせたり発症を予防したりできるというメリットがあることから、コミュニケーションロボットを導入している施設もあります。
 

周囲の協力を仰ぐことが遠距離介護成功の鍵

被介護者である両親と毎日関わることができないからこそ、周囲の人々の目と手を借りるのが遠距離介護を成功させるポイントです。協力をお願いしたい人と信頼関係を築き、コミュニケーションを積極的に図っていきましょう。
介護はお金の問題とも密接に絡んでいるため、介護サービスを受ける場合は、助成金や割引などを最大限活用しながら、少しでも負担額を減らせるように工夫することが大切です。
また、認知症や脳疾患後の後遺症などにより自宅での介護サービスのみでは困難になってきた場合は、被介護者の状況やニーズに合った施設への入所を検討する必要が出てきます。ただし、多くの高齢者は自宅で過ごすことを希望しているものです。本人の意向を確かめながら、最善の形を検討していきましょう。
 

(注)本記事の内容は、公的機関の掲出物ではありません。記事掲載日時点の情報に基づき作成しておりますが、最新の情報を保証するものではございません。

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